プリセットの向こう側へ。シンセサイザー学習ソフト「Syntorial」を制覇者がレビュー

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目次

はじめに

対象読者

  • シンセサイザーをいつもプリセットそのままで使っているが、調整できるようになりたい
  • シンセサイザーの音作りを勉強・研究しているが理解が進まない
  • シンセサイザーの勉強と同時に英語もちょっと勉強したい
  • Syntorialの購入を迷っているから学習プログラムを全クリした人のレビューを読みたい

この記事からわかること

  • Syntorialとは何か
  • Syntorialが他のシンセサイザー教本や解説書より優れている点
  • 学習プログラムを終えた筆者から見た感触や良いところ/悪いところ
筆者紹介
奈沼蓮アイコン画像

奈沼 蓮

DTMer、ライブハウスPAエンジニア

Syntorialはサウンドデザインの基礎を作ってくれたソフトなのでレビューに気合が入っている。
まじめにやるとDTM人生が変わるレベルで良いソフト。

全レッスン制覇証拠スクショ

現在の筆者(username : curry)のSyntorialスタート画面

全レッスンクリア後はスタート時こんな表示が出ます。
(全レッスン満点ではないことが左の小さいバーを見るとわかってしまうのが少しカッコ悪いです)

「Now go forth and program… 」(意訳「もう後は自分でシンセサイザープログラミングの高みを目指していけ」)
という製作者からのメッセージが身に沁みます。
精進します。

Syntorialはバークリー出身の音楽家が作った「シンセサイザーの学習ソフト」

Syntorial公式の紹介動画

Syntorialは端的に言えば「シンセサイザーを学べるソフトウェア」です。
名は体を表すと言いますが、Synthesizer + Tutorial(チュートリアル、指導の意) で Syntorial という名前にしたようです。

Windows / Mac 両対応です。ちなみに筆者のM1 Macminiでも動作確認しました。
(iPad版もあるようですが、筆者は試してません。)

製作者はJoe Hanley氏。
バークリー音楽大学卒業生であり、演奏家、プロデューサー、音楽教師の側面を持ちます。
アメリカで最高峰の音楽大学であるバークリーの卒業生が作ったと聞くと、とんでもなく高難易度の内容な気がしますが実際は基礎的なことから教えてくれます。
教師の経験を活かしたわかりやすい解説で、初心者からでも段階的にシンセサイザーの音作り・音の構造がわかるようになっています。

学習ソフトではありますが、学習システムはゲーミフィケーションされています。
飽きにくく、達成感が得やすいです。

学習プログラムは33セクション、199レッスンあります。
私は毎日30分 ~ 1時間やって修了まで3ヶ月掛かりました。
耳がいい人や中級以上のシンシスト(シンセサイザー奏者)が始めればもっと早く終わるかもしれませんが、かなりボリュームあります。

更にゲームでいう拡張ダウンロードコンテンツ的な存在として「Download Lesson Packs」があります。
しかも無料。
こちらはSyntorialで学んだことをメジャーなシンセサイザーであるSerumやMassive, Sylenth1などに応用することを助ける学習プログラムです。

Syntorialでシンセサイザーの音作りを学習するメリット/デメリット

メリット

ゲームに近いので楽しくて続けやすい

Image by Pexels from Pixabay

学習や勉強というと、難しいのが「できるようになるまで続ける」ということです。
大抵のことは継続できれば身に付きますが、継続すること自体にハードルがあります。

その点でSyntorialは優秀です。
「ゲームくらい楽しい」は言い過ぎですが、ゲームのように楽しく勉強でき自然と継続する工夫が盛り込まれています。

  • 簡単な問題から徐々にステップアップ
  • 答え合わせがあり、それも「どれくらいの精度で合っているか」を4段階(星0 ~ 3)で評価してくれる
  • 回答が合っているとGOOD JOB!とかPERFECT!の表示、「Yeah!」とかの効果音で褒めてくれる

教本を買ったりして独学するよりも手応えがあり、成長が実感しやすいです。
そのためよくわからないことがよくわからないままになるということもなく、地に足のついた学習ができます。

レッスン冒頭のチュートリアル動画が親切

各レッスン冒頭では最初にチュートリアルビデオがあります。
内容は各レッスンで教えるシンセサイザーの要素(例えばオシレーターとは何か、オシレーターは教材のシンセのどの部分にあるのか、オシレーターから出す波形の違いによって音はどう変わるのか)ということを説明してくれます。

「学校の授業で問題演習の前に先生が実際に例題を解いて解説してくれる」イメージがまさにそれです。

残念ながら英語音声のみで日本語には対応してません。
話者は製作者のJoe本人です。
欧米人男性が喋る場合、やたら低い声で聞き取りにくかったりする場合もありますが、欧米人男性にしては高めの声で喋ってくれます。聞き取り自体は難しくないです。

内容も中学2年生くらいの英語リスニング力があれば多分半分くらい聞き取れます。
聞き取れなかったり、知らない単語喋ってきてよくわからない部分があっても、Joeが画面上のシンセを実際に動かしながら説明しているので「多分こういうこと言っているんだろうな」と補完できます。
最悪全く英語わからなくても説明中のシンセの操作と出音に注目してればなんとかなります。

製作者が有名大学卒であり情報ソースが信用できる

Photo from Wikipedia 「Berklee College of Music」

権威主義的な話ですが、「Syntorial製作者がアメリカで最も有名な音楽大学の卒業生」というのはひとつの価値だと思います。

音楽の良し悪しは主観的な判断要素が大きい世界です。
そのためか一応その道のプロである人が書いた本であっても、楽器やミックスの教本には誤植やミスリードと思われるものが散見されます。

業界の先輩の意見を鵜呑みにせず、実際の音を聴き自分の感覚や美意識を頼りに情報の質を見極めていくことが必要になります。
しかしそれが初心者には難しいのも事実です。

「アメリカで最も有名な音楽大学であるバークリーの卒業生」というのはそんな世界でも信用に値する要素です。
世界から集まる音楽の天才達が、安くない学費を払って教えを受けに集う場所です。
中途半端な実力では卒業どころか、入学することすらできないでしょう。
つまり「本物の実力を持った人物が作った教材」である可能性が極めて高いということです。

デメリット

定価14000円前後で教材としては高価

値段は定価で14000円前後(購入するサイトで異なる+為替変動あり)で高めです。
Kindle Unlimitedなどでシンセサイザーの教本を読んで勉強するのと比べればかなり高いです。

一応教材の他に「Primer」という教材で使ったものと同じプラグインシンセがついてきます。
スタンドアロンでも使えます。
しかしこれは特別音がいいというわけではないので楽曲制作には向きません。
クセが少なくて操作しやすいので私は作曲段階では使ってますが、編曲やミックス時にもっといいシンセに差し替えます。

年に何回かセールを実施しており、セール時は40 ~ 50%OFFになります。
なので基本的にはセールで購入するのがおすすめです。
(筆者はSyntorialを見つけた時に「セールを待っている間に勉強した方がリターンが大きい!時は金なり!」と考えて定価で購入しましたが、リターンが大きい保証はないので特におすすめはしません。)

セールの他に学生割引(Educational Discount)もあります。
こちらは学生なら公式価格から40%OFFです。
セールでの割引とは併用できないですが、いつでも1万円弱(9600円くらい)で購入できます。
学生割引の詳細は記事終わりに載せます。

シンセ本体、レッスン説明、アプリ操作、全て英語

Image by Наталия Когут from Pixabay

メリットの方でも触れましたが、Syntorialは全て英語です。
多言語対応無し。
一応公式サイトは英語の他にスペイン語にも対応していますが、日本語には対応してません。

「英語とは高校卒業と同時に縁を切った…(もう絶対やりたくない)」みたいな人にはおすすめできません。

使っている英語自体は難しくないので、英語に苦手意識がない人や「ついでに英語も勉強してやるぜ!」みたいな向上心高めの人にはおすすめできます。

199のレッスンを乗り越えて見える世界

シンセサイザーを知ることで魅力的な音をイメージしたり、真似したりできる

Syntorialで勉強する以前、筆者にとってシンセサイザーはとっつきにくい楽器でした。
そもそも聴いている楽曲中でシンセサイザーの音が出てきても「シンセサイザーで作った音」として認識できていなかったと思います。
シンセサイザーの音の魅力や表現力も知らなかったので、当時作った曲ではシンセサイザーが全く入っていません。

それがレッスンを三分の一を過ぎたあたりからシンセサイザーの利点に気づき初め、三分の二を超えたあたりからは呼び出したプリセットを思い通りに調整できるようになりました。

修了した今では初めて見るシンセサイザーでも、ひと通りつまみをぐりぐりいじりながら音を聴けば機能が把握できます。
ちなみにシンセサイザーのつまみはメーカーによって機能が同じものでも表記表現が異なっていることがあります。(例えばLow Cut とCut Offなど)
見た目や説明書だけではあまりわかりません。

プリセットの音の余分な部分や足りない部分を把握して曲に合わせて調整できるようになったり、耳コピの際に音色もコピーできるようになることは大きな収穫です。

ギターやベース、ミックスにも応用可能

Image by EyeCandyDesignz from Pixabay

シンセサイザーの音作りスキルはシンセサイザーにしか使えないわけではありません。
ギターやベースといったエフェクターを用いる楽器のサウンドメイク、さらにミキシングにも応用が効きます。

一説には「コンパクトエフェクターは元々シンセサイザーに備わっていたエフェクトユニットを独立させてできたもの」とあります。
つまりシンセサイザーの音作りを学ぶことは、各種エフェクターを学ぶことと多くを共通します。
実際Syntorialだけでも12のエフェクト(細かく見るなら14の機能)を学ぶことができます。
ざっと並べるとFrequency Modulation, Filter, Amp Envelope, Modulation Envelope, LFO, Destination, Unison, Distortion, Phaser, Chorus, Delay, Reverb, Ring Moduration, Oscillator Sync です。

ギターでもよく使うものと共通するのはDistortion, Chorus, Delay, Reverb, Phaserがあります。

ミキシングでは超有名どころで頻出のエフェクトであるイコライザーやコンプレッサーは無いです。
しかしイコライザーと同様に周波数バランスに主に作用するFilterがあります。
コンプレッサーと同様に音のダイナミクスに主に作用するAmp Envelopeがあります。
それぞれ直接的な操作には違いがありますが、機能は似ているので応用が効きやすいです。

レッスンでこれらのエフェクトの基礎を身につければサウンドデザインのスキルも自然と上がります。

まとめ : ゲーム感覚でシンセサイザーに留まらないサウンドデザインが学べる

今回はAudible Genius「Syntorial」を実際全レッスンクリアした筆者の視点でレビューしました。

総評としてはシンセサイザーの教材としてかなり価値があるといえます。
その理由として

  • ゲーム形式で学習が継続しやすい
  • 学校授業のような親切なチュートリアルビデオ解説がある
  • 開発者の経歴が信頼に値する

ということでした。

逆にあまり価値が見出せない場合としては、英語が苦手な人の利用です。
購入からレッスン本編まで全て英語表記、英語音声です。

初心者シンシストやDTMer、初心者サウンドデザイナーには特におすすめできます。
他にも初級~中級者ギタリスト、初級~中級者クラスのミキシングエンジニアにもおすすめできます。
周波数分布に対する感性やサウンドデザインの力が身につくからです。

余談ですが筆者が初めてPAエンジニアの面接&採用試験を受けた時、Syntorialをやっていたおかげで周波数に対する感覚が備わっていて、評価チェック項目のスピーカーチューニングがそこそこ上手くできました。

今回の記事は以上です。
お役に立てれば幸いです。

付録 : 購入先情報&セール情報

学校関係者でなければPluginBoutiqueでの購入がおすすめです。
セール時でなくても公式サイト定価より2000円近く安く買えます。
しかもバーチャルキャッシュで500円近く返ってきます。

学生や教職員などの学校関係者であれば、公式サイトで学割(Educational discount)が使えます。
証明書類の提出がありますが、Web上のアップロードで済み、サイトもSSL暗号化されているので安全性高いです。

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