【リバーブ大好きエンジニアが評価検証】BABY Audio 「Crystalline」レビュー

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目次

はじめに

対象読者

  • BABY Audio Crystallineの購入を検討している人
  • 無料リバーブプラグインとの比較が見たい・聴きたい人

この記事からわかること

  • Crystallineの基本情報
  • Logic付属リバーブプラグインとの比較(Room, Hall, Plateなど個別比較)
  • Crystallineをお得に賢く買う方法
筆者紹介
奈沼蓮アイコン画像

奈沼 蓮

DTMer(ボカロP)、ライブハウスPAエンジニア

リバーブを語らせたら1時間はかかりそうな勢いでリバーブにこだわりを持っている。PAを担当したライブ出演者からはリバーブの演出に定評がある。

Crystallineとはどんなリバーブか

百聞は一見に如かずということで、筆者自身がCrystallineを使って本気でパラメータ調整して曲を作ってみました。
使ってるリバーブはCrystallineのみです。他空間系エフェクトはLogic付属のステレオディレイのみです。
イントロのピアノ部分だけでも聞いてみてください。

これを聞いて「このリバーブ良いかもしれない」と感じたら、記事続きを読む価値ありです。
もはや「これだけでも買う価値がある!」と感じた人の為に購入先を下に貼っておきます。
ちなみに私もPlugin Boutiqueで買いました。

Crystallineの基本情報と差別化点

上の動画が公式のチュートリアル動画です。
何故か動画中のdemoの音がエレクトロ系ばっかりなので、筆者の検証ではアコースティック系を扱いました。

基本情報

CrystallineはBaby Audioによるリバーブプラグインです。
リバーブプラグインの中でも「アルゴリズミックリバーブ」に分類されます。
プラグイン開発背景には

過去のコンピュータでは性能不足により実現できなかった理想的なアルゴリズミックリバーブが、
現代のコンピュータなら実現できる

という意図があり、伝統的なアルゴリズミックリバーブの良さは保ちつつ、現代のコンピュータで性能を高めたものになっています。

初心者向け解説「アルゴリズミックリバーブ」とは

リバーブエフェクトの分類のひとつ。もうひとつは「コンボリューションリバーブ」。
アルゴリズミック型では仮想の建物空間の残響音を数学的計算処理で再現する。
一方のコンボリューション型では現実にある実際の建物で残響音を測定し、測定データに基づいて残響音を再現する。

もともとコンピュータの計算性能が低かった時代はコンボリューション型は実現不可能で、負荷の軽いアルゴリズミック型のリバーブが主流だった。時代とともにコンボリューション型が実現可能になり、現在では用途によって使い分けられている。

アルゴリズミックリバーブの代表的な製品には「EMT250」、「Lexicon 480」が挙げられる。

他のリバーブプラグインとの差別化点

他製品との差別化点ですが、正直なところわかりやすいものはありません。
Crystallineは「この製品にしかないものすごく個性的な特徴がある」というものではなく、「純粋に基本性能が高い」というタイプの製品です。

現代のアルゴリズミックリバーブを名乗るだけあり、シンプルな見た目の割にリバーブ成分の調整に必要な補助エフェクトがひと通り揃っています。
EQ, Gate, Duckerに加え、リバーブ高周波成分を長めに保つShimmerや、波形の時間軸を反転するReverse、リバーブの時間を止めて鳴らし続けるFreezeまで揃っています。

CPUパワーの低いパソコンでも使えるモードEco Modeもあり、せっかく買ったのに重くて使えないという心配もありません。

Crystalline対応環境

Mac : OS 10.7以降、M1対応済。
Windows : Windows 7以降。

DAW付属リバーブと音質比較三本勝負

実際どんな音がするのか、ちゃんと聴きたい人のためにサンプルのオーディオデータを用意しました。
リバーブの中でも使用頻度の多いRoom, Hall, Plateの三種三本勝負。
対決の相手はLogic Pro付属のリバーブエフェクト代表Chroma VerbとSpace Designerです。
比較に使う設定はプリセットそのままを基本とし、初期反射に関わるPre Delayとリバーブの長さに関わる部分のDecay Timeのみ統一させます。

Room(Chamber)対決

roomのイメージ写真
Photo by Arm Sarv on Unsplash

まずは基本中の基本のRoom Reverbから。
小さめの部屋の空間表現はもちろんですが、マイク録音による不自然なモノラル感を軽減したり、楽器編成全体の一体感を出す重要なポジションです。

クラーベでの比較

クラーベ(clave)はいい音のする一対の木の棒です。
「火の用心(カンカン!)」で使ってるアレの洋風の呼び名です。

再生順に「ドライ(ノンリバーブ)」、「LogicのRoom」、「CrystallineのRoom」

どっちもそんなに悪くなく良い音ですが、2番目のLogic Chroma Verbの方が金属的な響きが強いです。
3番目に鳴るCrystallineの方は主張薄めなものの、嫌な金属感はほぼありません。

バイオリン(ソロ)での比較

Roomリバーブの評価をするとなればバイオリンは外せません。
リバーブ無しのバイオリンはちょっと聴くのが辛いくらいキツい音ですが、部屋の反響と混ざることでいい感じになります。
フレーズは瀧廉太郎の「荒城の月」を使い、筆者がDAWで演奏しました。

こちらも再生順に「ドライ(ノンリバーブ)」、「LogicのRoom」、「CrystallineのRoom」

2番目のLogic Chroma Verbの方が深刻味のある音がします。
やはりCrystallineのRoomは存在感軽めに作られているという印象です。そのぶん上品な感じは強いです。

Hall対決

Hallのイメージ写真
Image by David Mark from Pixabay

次にHall Reverbです。
リバーブエフェクトの中で最も有名で効果がわかりやすいものです。
コンサートホールのような大きな空間の表現はもちろんのこと、濃密で重い残響は楽器の少ない曲で空間を埋めてくれたり、かけた楽器の存在感をグッと押し出してくれます。

クラーベでの比較

再生順に「ドライ(ノンリバーブ)」、「LogicのHall」、「CrystallineのHall」

Roomリバーブでの比較同様、HallでもCrystallineのアルゴリズムはやはり主張を抑えた上品な響きになるよう作られているようです。

グランドピアノ(ソロ)での比較

Hallリバーブの評価となれば、グランドピアノでの比較は外せません。
フレーズはアニメ「ひぐらしの鳴く頃に」挿入歌「you」から一節お借りし、筆者が演奏したものです。

再生順に「ドライ(ノンリバーブ)」、「LogicのHall」、「CrystallineのHall」

Crystallineの方が圧倒的に良い感じになりました。
今まで主張が弱かった印象でしたが、ピアノの重い部分で混ざらずに軽い部分を補うように鳴っています。
ピアノ本体構造が持つリバーブ成分との混ざりも良いです。
LogicのChroma Verbは一体感に欠けているのに存在感がピアノの後ろに埋もれてしまってます。

Plate対決

Plateのイメージ写真
Image by Kasvi from Pixabay

最終戦はPlate Reverbの対決です。
今までのRoomやHallと異なり空間表現ではなく、金属板に響かせた音を足すものです。
金属板の不規則な周波数応答によって、原音の倍音にはない周波数成分が足されることにより「うっすら輝く」ような音になります。「降り注ぐ残響」と感じる人もいます。
金属板に響かせるという印象からロックやエレクトロ向きに聞こえますが、意外にも実際は断然アコースティック(生楽器)向きです。

グランドピアノ(ソロ)での比較

再生順に「ドライ(ノンリバーブ)」、「LogicのPlate」、「CrystallineのPlate」

違いがものすごくわかりやすい!
LogicのSpace DesignerのPlateはかなり主張激しいです。同じセンド量とは思えない程。
なんか深海を彷彿とさせるような表現。世界が遠くなった感覚。
対してCrystallineはやはり薄味というか、嫌味な音もなければ明確な個性も無い。

バイオリン(ソロ)での比較

再生順に「ドライ(ノンリバーブ)」、「LogicのPlate」、「CrystallineのPlate」

これも違いは出るんですが、Logic側の主張が強すぎるのも相まってCrystallineが薄味に感じます。
Crystallineでも使っているのはPlateリバーブなんですが、どちらかというとRoomリバーブ的な「ドライ音の不自然さに自然な残響音を足す」みたいな働きをしています。

追加対決 Room&Plate重ね掛け

気づいたことがあるので、参考材料として追加試合をひとつ。

バイオリン(ソロ)にRoom&Plateでの比較

再生順に「ドライ(ノンリバーブ)」、「LogicのRoom&Plate」、「CrystallineのRoom&Plate」

なんとなく今までの検証で気になっていたんですが、これを聴いて確信しました。

Crystallineは異種のリバーブの重ねがけで真価を発揮しやすい

ということです。

というのも一昔前のリバーブエフェクトはあまり出来が良くなく、複雑で美しい響きが作れませんでした。
そのため単体性能の粗を隠し、複雑な響きを出すために「複数台合わせて使うのが常識」でした。

現在では単体のリバーブでも結構いい音を出してくれますが、昔のスタイルでのメリットも多くあり、続いている文化です。

ちなみに筆者もリバーブは「複数重ねがけ派」です。
大体の曲でRoom、Hall、Plateの3種類を音色のバランスや存在感の濃淡を見ながらかけていきます。

LogicのChroma VerbやSpace Designerは単体ではっきりとした個性が出ますが、そのぶん重ねがけには向いていません。
この辺りはどちらが優秀というわけではなく、使い手の都合によるものです。

対決総評

結論としては「Crystallineの方が優秀」だと思いました。
Hallリバーブの質感と元音との混ざり具合が圧倒的に良いです。
PlateとRoomでの重ねがけの結果も一体感があって良いです。

LogicのChroma Verbは付属プラグインではありますが、評判が良いリバーブです。
それと比較しても良い、と感じられたのでCrystallineはおすすめできます。

筆者自身、自分の曲のミックスで採用したくらい良いです。
記事冒頭の動画のピアノイントロをまだ聴いていなかったら、ぜひ聴いてみてください。Crystallineをガチで調整した時のポテンシャルがわかります。

一方デメリットとしては、Crystallineは一昔前のアゴリズミックリバーブの問題であった「金属的な響きがしてしまう」という点を強く対策しています。
音楽ジャンルによっては「昔のデジタルリバーブ感」として金属っぽさが必要になることも考えられるので、その場合は積極的にパラメータを工夫する必要が出てきます。

Crystallineを買える場所は?どこがお得に買える?

Photo by Pixabay

CrystallineはBABY Audio公式ページのほか、いくつかの海外プラグイン販売代理店でオンライン購入できます。
残念ながら完璧に日本語サポートされた販売サイトでの購入はできません。(2022年7月現在)

筆者のおすすめは「Plugin Boutique」で「セール時」に買うことです。
BABY Audioの製品はPlugin Boutiqueでこまめにセール対象になる傾向にあります。
特にCrystallineは2022年発売の新製品なのでセールチャンスが特に多いです。
Plugin Boutiqueなら購入時にVirtual Cashなどでバックがあり、公式サイトよりお得に購入できます。
さらにメールでの日本語サポートも対応しているので、インストール時などで困った時の助けになります。

下にPlugin BoutiqueのCrystalline商品ページに飛べるリンクを用意しておきました。
購入の際は是非お使いください。

まとめ

今回の記事ではBABY Audio 「Crystalline」の紹介と性能比較検証を行いました。

重要なポイントをまとめると

今回のまとめ
  • Crystallineはアルゴリズミックリバーブの正統進化を目指したプラグイン
  • Windows、Mac共に対応。M1 mac (Apple Silicon)にも対応済み。
  • エレクトロ系音楽だけでなく、アコースティック系でも使える自然な残響が出せる
  • リバーブ各種の個性は薄めで上品な仕上がりだが、複数種重ね掛けすることで真価を発揮する
  • 定評のあるLogic付属リバーブと比較してもいい音なので、有料プラグインとして買って損無し

こんな感じでした!

今回の記事は以上です。
お役に立てれば幸いです。

付録 : 登場製品まとめ

今回の主役

グランドピアノdemo音源で使った製品

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