【テープ系処理コスパ最強】AudioThing「Reels」レビュー&類似プラグイン比較

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目次

はじめに

対象読者

  • AudioThing「Reels」の購入を検討している
  • テープシュミレータープラグインでどれを選ぼうか迷っている
  • テープシュミレーターでどんな面白いことができるのか知りたい

この記事からわかること

  • 音楽制作におけるテープシュミレーターの使いどころ
  • AudioThing「Reels」の基本情報
  • 他のテープシュミレーターとの違い、強みと弱み
筆者紹介
奈沼蓮アイコン画像

奈沼 蓮

DTMer、ブロガー

テープストップの音を「テープを止める時の音」だと知ったのは実はここ最近。

音楽制作におけるテープシュミレーターの使いどころ

Photo by Xingye Jiang on Unsplash

テープストップを使った演出道具として使う

「テープストップ」と聞いてもどんな音かわからない読者の方へ。こんな音です。(再生時音量注意)
どこかで聞いたことあると思います。

最大の魅力はこれです。
テープストップの音はテープシュミレーターでないとできません。

テープストップはテーププレイヤーの「再生停止」がCDなどと異なり、「ゆっくり止まる」ことによって起きる効果です。
ピッチが下がっていくので強烈なローを出すこともできます。
再生開始時も「ゆっくり始まる」ので「テープスタート」と呼ばれる効果が起きます。

実際の楽曲では曲終わりに使ったり、Aメロ→Bメロなど曲構成が移る部分の転換に使われます。

Lo-Fiの演出として使う

Lo-FiとはLow-Fidelityの略で、簡単にいうと「低音質」のことです。
対義語はHi-Fi (High-Fidelity)で「高音質」を指します。

テープレコーダーや古いラジオやトランシーバーなど、敢えて低音質なものを使うことによって「古さ」「懐かしさ」「切なさ」「破損や損傷」「アンダーグラウンド感」などを演出できます。

アンダーグラウンド感の演出はHiphopの音楽性と相性が良く、よく使われます。
実は日本のロックでも効果的に使われているものもあります。

Lo-Fiによるロック曲の演出例: はてな「声?」(イントロ部分のボーカル)

Lo-Fiの音じゃなくなったタイミングで音が急に「シャキッ!」とするので鮮烈な感じを出せます。

サチュレーションとして使う

これはミキシングエンジニア寄りの使い方です。

サチュレーションとは音を歪ませて倍音を付加するプラグインです。
大抵の場合、うっすら歪ませることで元音に「明るさ」や「温かみ」を出したりすることに使います。
いわゆる「サチらせる」というテクはこれです。

古いテープレコーダーなどの機材は「それぞれ独自の繋ぐだけで足される歪み」を持っています。
このあたりは奥が深く、「どんな歪み成分が欲しいか?」によって使うサチュエーションは変わります。
テープシュミレーターを使ったサチュレーション手法は定番のものです。
実際、Lo-Fi系プラグインはプラグインの種類で分類するとき「Lo-Fi」ではなく「Saturation」に分けられます。

Reels基本情報

  • ヴィンテージテープシュミレーション(エミュレーション)
  • 値段は定価$59、セール時$35(為替変動あり)
  • テープ種類は3種
  • テープエコー、テープストップ、テープスタートのエフェクトが可能
  • 簡単なスピーカーシュミレート、マイクシュミレート付き
  • プリセットは50種

システム要件

  • Windows/Mac両対応(64bit) ※MacはM1プロセッサ(Apple Silicon)も対応
  • VST2、VST3、AU、AAX
  • 最低CPU 2GHz、RAM 4GB
  • iLokやe-Licencer不要
  • 1ライセンスでPC3台まで利用可

類似製品比較

Vengeance Sound「Tape Stop」

主な特徴

  • テープストップ/スタートに特化している
  • テープストップ/スタートでリズムシーケンスが組める。しかも64ステップもある。
  • 定価$60前後(為替変動あり)
  • テープ由来のノイズ付加やエコー、サチュレーション効果は無い
  • 利用にUSB e-Licencerが必要
  • M1mac未対応。Intel CPUのみ。

Lo-Fi効果や特殊演出ではなく、「リズムパートの一部」としてテープストップを使いたい人を想定した製品です。
USB e-Licencerが必須な点はCubaseユーザーなら気にならないと思います。

Wavesfactory「Cassette」 & 「Cassette Transport」

有料プラグインの「Cassette」と無料プラグインの「Cassette Transport」に機能が分かれているのでまとめて紹介します。

主な特徴

  • Lo-Fi感やサチュレーションの設定にこだわることができる(個別にON/OFFもできる)
  • テープ種類4種、プレイヤー種類3種
  • テープストップ/スタート用の「Cassette Transport」は無料で使える
  • Cassetteは定価$65程度。セール時$40程度(為替変動あり)
  • M1 mac対応(Rosetta2経由)
  • テープエコー機能は無い

テーププレイヤーの質感を再現することに強みがある製品です。
Lo-Fiの音色に明確なこだわりがある場合はこれが一番融通が効きます。

エフェクトにはテープエコーのみ無いですが、テープ由来のワウやフラッター、ノイズ付加は付いています。

Arturia「Tape MELLO-FI」

Tape-MELLO-FIの写真

主な特徴

  • テープシュミレーターでもあり、メロトロンシュミレーターでもある
  • それぞれのツマミの名称がわかりやすい
  • ディストーションレベルまで深く歪ませることもできる
  • ぱっと見ではわかりにくいが、テープストップ/スタートエフェクトもある(速度調整可能)
  • 初期プリセット25種
  • M1 mac対応
  • テープ種類は1種類のみ
  • テープエコー機能はない
  • 価格高め(定価$109。セール時半額)(為替変動あり)
用語解説メモ「メロトロン」とは?
メロトロン画像
引用: https://h-resolution.com/blog/gforce-software-mellotron-history/

1960年代に登場した世界初のサンプラー楽器。

当時はオーディオサンプルデータをテープで記録したものを搭載していた。

ビートルズやレッドツェペリンなどの世界的アーティストも利用していたことで有名であり、現代でのLo-Fi楽器の代表格のひとつ。

シンセサイザーに定評があるArturiaらしさを感じるプラグイン です。
操作部がシンセサイザーやギターエフェクターに近いデザインで、馴染みやすさがあります。

テープ種類は選べませんが、調節できるツマミのパラメーターは程よく厳選されていて直感的に使い慣れます。

比較から見えた「Reels」の長所と短所

他製品と比較するとReelsは「ひとつでテープ周りのいろんなことができるバランス型」です。

エフェクト種類は最多。調節可能部分は中くらい。値段も有料製品の中ではやや安めです。
コスパが高く、テープ系エフェクトをとりあえずサクッと揃えたい!という場合にはうってつけです。

一方でプリアンプゲインのツマミは無く、サチュレーション周りは調節しにくい短所があります。

サウンドデザインにこだわりがあるならWavesfactory Cassetteを。
テープストップ機能をハードに使いたい!というIntel PCユーザーはVengeance Sound Tape Stopを。
という感じに目的に合わせて判断するのが良いです。

まとめ

今回の記事ではAudioThings「Reels」のレビューでした!

ポイントをまとめると

  • テープシュミレーターはテープストップ/スタートという独自の必殺技のほか、Lo-Fiの演出はもちろん、サチュレーションとして使える。
  • Reelsはテープシュミレーターの中では機能が充実していて初心者からでも使えるバランス型。値段も安め。

という感じでした!

今回の記事は以上です。
お役に立てれば幸いです。

付録: 登場製品まとめ

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