【ライブアーティスト10組に実際に使って貰いました】DI最高峰「RNDI」レビュー

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目次

はじめに

対象読者

  • RNDIの購入を検討している人
  • 特にRNDIをライブの持ち込み機材にする予定のアコースティックギター奏者、エレキベース奏者
  • 持ち込み機材にDIを検討中のライブアーティスト

この記事からわかること

  • DIの基礎知識(DIの主な役割、使うと良い場面)
  • RNDIの主な特徴、他のDIとどこが違うのか
  • ライブハウスの出演アーティスト10組にライブで使って貰った印象
  • 価格、ポイント還元などから考えるおすすめ購入先
  • 筆者の総合評価
筆者紹介
奈沼蓮アイコン画像

奈沼 蓮

ライブハウスPAエンジニア、DTMer

RNDIは「憧れの機材」のひとつだったので、この記事を書くのに熱が入りすぎないようセーブしている。

そもそもDIとはどんな音響機材?役割と使いどころ

Image by Elad from Pixabay

DIは音響機材の中でも一般には馴染みが薄いほうです。
まずはDIの基礎となる部分を紹介します。

DIがもつ2つの役割

ノイズ軽減(S/N比向上)

DIはノイズが乗りやすいアンバランス信号をノイズに強いバランス信号に変換することができます。

ノイズの原因は主に外部からのケーブルに入ってくる電磁波です。
スマホやWi-Fiの電波、太陽や照明の光がその元です。

使うケーブルが長いほど拾ってしまう電磁波は多くなるので、ライブハウスなどの広いスペースで10m以上のケーブルを使う場合はバランス信号化が必須です。
DTMデスクでもPCなどから発せられる通信電波のほか、機材の密集によって電磁波が多い環境なのでバランス信号化した方が良い場合もあります。

トランスによるサウンドの味付け

DIの「価値を大きく左右する部分」は主にここです。

DIの必須構成パーツのひとつに「トランス」があります。
理論上ではトランス自体は音色に影響を与えないのですが、実際はさりげなく音色の雰囲気を変えます。
今回の製品にも関わってくる話ですが、伝説的ミキサーのメーカー「Neve」のミキサーの良さの一端は「搭載されていたトランスによってレコーディングされた音が良い変化をしていたから」という意見もあります。

「さりげなく音をよくしてくれるトランスが入っているDI」は高い製品になり、「あまり良くないトランスが入っているDI」は安い傾向にあります。

DIの使いどころ

ライブのPA機材

ライブ会場ではステージからPAミキサーまで数十~数百mの長さのオーディオケーブルを使います。
長距離ケーブルはノイズの対策が必須であるため、バランス信号化できるDIは必須機材のひとつです。
よく使う楽器としてエレクトリックアコースティックギター、キーボード、エレキベースギターが挙げられます。

気になった方はライブを見に行った際にステージ足元やベースアンプ上をよく見てみてください。
ケーブルが繋がった小さい箱のようなものがあるはずです。

この用途で代表的な製品はBOSSのDI-1です。

比較的安価で耐久性もバッチリ。修理もしやすく、ファンタム電源でも5V電池でも動きます。
使い勝手が良いライブハウス定番DIです。

レコーディング機材

レコーディングではノイズ軽減もありますが「音色の向上」の目的での理由が強くなります。
曲の雰囲気に合った味付けをしてくれる高級機種が採用されます。

今回紹介するRNDIは高級機種に分類されるので、購入者はレコーディング目的が多いです。

RNDIは他のDIとどこが違うのか?主な特徴

RNDIの強みが伝わりやすいように、他の定番DIと比較してみました。

DI代表機種との比較

DIの代表製品であるRoland DI-1、Countryman Type85と比較してみました。

スクロールできます

RNDI

DI-1

Type85
アクティブ/パッシブアクティブアクティブ(電池可)アクティブ(電池可)
Speaker Outからの入力可能不可可能
主な用途レコーディングライブライブ、映像収録
音質の傾向高品位普通やや高品位
主な強みNeve氏監修のパーツ安価、耐久性、日本製耐久性、映像機器との相性◎
各製品の比較

他と比べると、RNDIは明確な高級志向を持っています。
値段はやや張る分、音質に妥協を許さないアーティストに求められる存在です。

DAW上でリアンプ(正確にはリキャビネット)ができる

初心者向け解説「リアンプ」とは?

一度録音したものをオーディオインターフェースなどから出力し、エフェクターやアンプなど外部機器を通したものを再録音するレコーディングの手法。
主にギターやベースの素の音をライン録音しておき、後でギターアンプにつないで再録音する場合などに使われる。
注意しなければいけないのは一度録音したものは信号がLINEレベルに上がっているので、ギターアンプに繋ぐ場合は「リアンプボックス」を使い信号レベルを落としてやること。DAW上のアンプシュミレーターを使う場合は不要。

リアンプボックスで評判が良いのは「Reamp JCR」など。

RNDIはDIの中でも「Speaker Outに対応できる」製品です。

Speaker Outとはつまり「パワーアンプからスピーカーへの出力」です。
よくあるmic/inst入力やLINE入力とは異なり、電流値が桁違いに大きくなるのでSpeaker Out非対応のDIを使ってしまうと故障します。

パワーアンプまでの音を録音しておける利点は「後でマイクとキャビネットを差し替えることができる」ことです。
実際はオーディオインターフェースからパワーアンプ並みの出力はできないので、BIASやAmplitubeなどのアンプシュミレーター上の話になりますが、レコーディング後の調整の自由度は高まります。

ライブハウス出演アーティスト10組に実際に使っていただいた

今回のレビューを作成するにあたり、筆者がPAオペレートするライブ出演アーティスト10組に実際に使っていただきました。
内訳はエレアコ弾き語り5組とバンド5組です。

ちなみに会場の常設機材のDIは「MACKIE MDB-2P」でした。低価格帯の2chパッシブDI。

MDB-2Pもコスパは驚くほど良いDIですが、RNDIの方が明らかに上位機種なこともあり機材交換に反対意見はありませんでした。
むしろ「ぜひ使ってみたい」という意見が多かったです。

エレアコ弾き語りで使って貰った印象

UnsplashのLuke Thorntonが撮影した写真

DIが活躍する場面の定番であるエレアコ弾き語り。
ボーカル+エレアコなのでDIのサウンドが明確に観察できます。

一聴してわかる「上質」感。しかしSM58と相性はイマイチで浮く

ライブリハーサルのサウンドチェック時点から「上質」な感じがわかりました。
他の表現をするなら「シルキー」、「明るくもギラつかない」、「主張はありつつボーカルを邪魔しない奥ゆかしさ」といった感じ。

ただライブボーカルマイクの定番SM58の音と共に聴くと「これじゃない感」が出ます。

SM58は決して音質が悪いマイクではありません。
一流メジャーアーティストまでライブで使う、耐久性とライブ映えする音質を兼ね備えた信頼あるマイクです。
ただライブミックスに向いたやや「ワイルド」な音質傾向があります。
それがRNDIの持つ「上質さ」とは馴染みが悪く、ライブミックスがまとまりづらい印象でした。

KMS104となら上質さが馴染むかも

以前ライブ用ボーカルマイクの最上位機種のひとつの「NEUMANN KMS104」を持ち込んだシンガーソングライターがいらっしゃいました。

ライブハウスでは使う人を滅多に見ない超高級機種です。

その方は伴奏キーボードをライブハウスの常設機材である「Roland FP-30X」を使っていました。

FP-30はライブ用ステージキーボードとしては安めの部類です。
音色はRolandのピアノっぽいクセがありますが、鍵盤のタッチ感はそこそこ良く、そんなに悪い製品ではありません。
ライブハウスのサウンドカラーとも相性がよく、粗削りでも聴きどころはちゃんと持っています。
ただこの時は「組み合わせが悪く、ボーカルマイクのサウンドがキーボードに対して上品すぎて馴染まない」という印象でした。

私の経験を総合すると
「ボーカルマイクにKMS104、エレアコ用DIにRNDIを使えば上質でまとまりのあるライブミックスになるのでは?」
という気がします。
お金に余裕がある読者の方がいたらぜひ試してみて結果をコメントで教えてほしいです。

バンドのエレキベースで使って貰った印象

Image by Andreas Glöckner from Pixabay

DIが活躍する場所定番その2に相応しいベース用DI。
バンドサウンドの中でどんな活躍をしてくれるのか試しました。

弾き語りとは異なり馴染みやすい

意外にもロックバンドのエレキベースにはガッツリマッチしていました。
上品さが邪魔をするかと予想していましたが、ベースの役割である「低域を支える懐の広さ、奥ゆかしさ」のような印象に変わり、バンド全体の印象を一段階押し上げます。

解像度が高く周波数レンジも広いが、密度ある中低域、落ち着いた高域で使いやすい

ベース、特にエレキベースでは身体で感じる低域からパキッとした高域まで繊細に解像度高くサウンドを届けることが求められます。
その点RNDIはそれを見事に満たしています。

また周波数レンジが広いものには低域と高域だけ強く鳴るもの(いわゆるドンシャリ傾向)や、高域がキラキラキンキンしすぎる悪いものがありますが、それらも当てはまりません。
ベースの音の芯となる中低域に密度を感じ、高域は金属的な存在感がありながらも上品な「いぶし銀」のような印象です。

ライブミックスも非常にやりやすく、ベーシストには本当におすすめできる製品だと感じました。

おすすめできる人/おすすめできない人

筆者の使用体験を基に、RNDIがおすすめできない人/おすすめできる人をまとめます。

RNDIをおすすめできない人(DI購入は他の製品の方がおすすめできる人)

  • ワイルドさ、ラフな音楽性を魅力とするシンガーソングライター
  • レコーディング目的ではDIを使わない人
  • DIにかけるお金はできるだけ少なく抑えたい人

RNDIはベース以外では「上質感」が強く感じられます。良くも悪くも。
ライブハウスにある音響機材は「ライブ映えするワイルドなサウンド」なので、馴染まない可能性がある点は注意しましょう。

おすすめできない人への代替案

ちなみに上記のような場合、「MACKIE MDB-1P」がおすすめできます。

比較で挙げた定番のDI-1やType85も良いですが、コスパを求めるなら最強です。
余計な味付けをせずノイズ軽減できる、いい意味で透明な印象のDIです。
しかも安くて丈夫。ホントかどうかは知りませんがメーカー曰く「戦車級に頑丈」らしいです。
筆者もRNDIが向かないタイプの音楽性のアーティストのPAではMDB-1PかMDP-2Pを使っています。

多くのライブハウスではDI-1かType85を常設機材として置いているので、リハーサルのサウンドチェックでMDB-1Pと聴き比べて良さそうな方を使うということもできます。

RNDIをおすすめできる人

  • ベーシスト(ライブ、レコーディング両方で活躍)
  • 質感の高いボーカルマイクを使うシンガーソングライター
  • レコーディング環境用DIが欲しい人
  • パワーアンプ後の出力(Speaker Out)のレコーディングをしたいギタリスト/ベーシスト

これらの人は予算があるなら間違いなく買いです。
RNDIはDIなので値段は控えめなものの、最高級クラスの音響機材なので中古でも値段が下がりにくいです。
加えて中古市場でもほとんど見かけません。
DIは構造がシンプルなのでかなり壊れにくく、壊れたとしても修理が容易なためです。

キーボード奏者のような「ステレオのDIが欲しい」場合はステレオ仕様の「RNDI-S」もあります。

売っている場所は?おすすめ購入先は?

Photo by Pixabay

RNDIは高級機材の中でもメジャーな存在です。
そのためサウンドハウスのようなネット通販でも、大きめの楽器店でも売っています。

おすすめ購入先はサウンドハウス、次点でイケベ楽器店

まず購入先で最もおすすめできるのはサウンドハウスです。
筆者もよくお世話になっています。

楽器・音響製品国内最大手通販サイトで世界最安値保証、在庫あれば当日出荷翌日配送、日本語サポート、他社と比較しても高いポイント還元率、2000円以上で送料無料。
全く隙がありません。

サウンドハウスで在庫切れの場合はイケベ楽器が次点でおすすめです。

本体価格、配送スピード、ポイント還元率ではサウンドハウスに及びません。
ただ品揃えは強く、サウンドハウスで売り切れのレア製品もイケベ楽器では在庫ありのことは多い印象。
配送業者はサウンドハウスと同じ佐川急便なので楽器・音響機器の配送ノウハウもあり、Amazonや楽天より安心できます。
「サウンドハウスで在庫切れだけど、一刻も早く手に入れたい!」という場合はかなり良い選択肢です。

まとめ

今回の記事ではRupert Neve Designs 「RNDI」のレビューをしました。

ひとことでまとめるなら

Neveブランドの信頼を裏切らない上質さを持ち、レコーディング、ライブのベースと相性の良いDI

今回の記事は以上です!
お役に立てれば幸いです。

付録 : 登場製品まとめ

2ch分欲しい方には「RNDI-S」

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