【取説不在の上級者向けインターフェース】Apogee Symphony Desktop レビュー(やや辛口)

筆者保有のSymphony Desktop
目次

はじめに

対象読者

  • Apogee Symphony Desktopの購入を検討している、情報を集めている
  • Apogee Symphony Desktopにあまり人気がない理由を知りたい

この記事からわかること

  • Symphony Desktopが上級者向けである理由
  • 半年使っている筆者の所感
  • 買って後悔する人、しない人の特徴
筆者紹介
奈沼蓮アイコン画像

奈沼 蓮

DTMer、ライブハウスPAエンジニア

Symphony Desktop使用歴は半年程度。

「上級者向け」と書くと割とポジティブだけど、「不親切」と書いた方がネガティブだけど的確なこともある。と記事を書きながら感じている。

Symphony Desktopの基本情報

筆者保有のSymphony Desktop
筆者保有のSymphony Desktop

オーディオインターフェースとしての基本仕様

  • PCとの接続 : USB TypeA,C
  • メーカー : Apogee Electronics
  • input / output : Analog in×2 + Optical in×10 + (Software in×10) / Analog out×6(stereoペア×3)+Optical out×8
  • 電源供給 : 2口コンセント(USBバスパワー無し)

仕様からして「ホームスタジオ向けに作った高級機種」といった感じがします。
Analog inputが少ないのでボーカル、ギター、キーボード、シンセサイザーなどあまりインプット数を必要としないレコーディングはこれだけでいけます。Analog input 2つのチャンネルステレオリンクもできます。
逆にアコースティックピアノやドラムなどインプットチャンネル数が多く必要な楽器のレコーディングは別機器が必要です。

他製品との差別化点、強み

  • 付属ソフトウェアも含めM1 mac(Apple Silicon)ネイティブ対応
  • 標準マイクプリアンプ仕様のほかに名機マイクプリアンプシュミレーション2種
  • Mac/Windows対応のコントロール用ソフトウェア Apogee Control 2付属
  • 内蔵DSPプラグインによる外部エフェクト(ver. 1.3で完全体。2022年4月現在ver. 1.2で一部機能未実装)

コントロールソフトウェアはRMEのTotalMixを、内蔵DSPプラグインはUNIVERSAL AUDIOのUADプラグインを連想させます。
ライバル製品の良いところを取り込んだ印象です。

Symphony Desktopの上級者向け仕様を感じるポイント

多機能なのに取扱説明書(ユーザーマニュアル)が無い

Photo by Russ Ward on Unsplash

最大にして最凶にクセのあるポイントがこれです。
日本語のマニュアルが無いとかではなく、英語のマニュアルも含めて詳細な取扱説明書が存在しません。
本体箱にはもちろん、Apogee公式サイトのサポートページとかにもありません。
一応起動して音が出るくらいまではわかる「スタートアップガイド」のみです。

iPhoneみたいに説明書が要らないような工夫のある製品ならわかります。
しかしSymphony Desktopはそうではありません。
機能もいろいろ盛り込んであるため、普通のオーディオインターフェースより操作は数倍複雑です。

説明書無しは今後のソフトウェアアップデートが理由かも

この理由はおそらく「ソフトウェアバージョンアップデートが今後もあり、仕様変更が想定されるから敢えて作ってない」ことです。
Symphony Desktopは発売から余裕で1年以上経っていますが、「ソフトウェア的には未完成」です。
現行のソフトウェアアップデートはver. 1.2ですが、発表されているもののまだ実装されていない機能がいくつかあります。
そのため取扱説明書が作りにくい、作ってしまうと後でややこしくなるという事情が察せます。

ある程度音響知識があり、根気よく手探りしていける人向け

取扱説明書が無い以上、使っていく上で機能を把握する手段は手探りです。
公式チュートリアルも初歩部分しか解説してないし、ユーザーが多い製品でも無いのでグーグル先生もあまり頼りになりません。
ある程度音響知識があり、手探りで機能を把握していく根気がある人でないと使いこなすのは難しいでしょう。

ちなみに私は「正しい電源の切り方」に気づくまで1日かかりました。(ボリュームノブを数秒間長押しでシャットダウン選択肢が表示される)
精密機器なので電源を安全に切る方法は取説に書いておいて欲しいのですが、それすらスタートアップガイドには書いてありません。

仮想ミキサーは複雑なルーティングも組めるがわかりにくい

Symphony Desktop ミキサー1の画面
Symphony Desktop ミキサー1の画面

Symphony Desktopは内部に仮想ミキサーが組まれています。
しかも2レイヤーあり、切り替え可能。
これが慣れるとそこそこ便利ですが、やはり複雑です。

例えば

  • ダイレクトモニター機能
  • ループバック機能(配信向け機能)
  • 仮想サウンドデバイスを使ったI/Oの確保
  • Main OutとHeadphone Outで別々の内容を再生する(レコーディング向け機能)

こんなことができます。

しかしFocusriteやYAMAHAのオーディオインターフェースのように「DIRECT MONTORのスイッチをON」にする、「LOOPBACKモードに切り替える」みたいに簡単にはできません。
「オーディオ信号がどう流れればダイレクトモニターになるのか?もしくはループバックになるのか?」ということを考えて仮想ミキサー上でルーティングを設定する必要があります。

融通は効きますが、上級者向けの仕様です。
繰り返しになりますが現時点で取扱説明書は存在しません。(追い討ち)

Apogee公式や楽器店のサイトにも無い情報で、たぶんこのブログにしか書いてない情報ですが、ルーティング内に「Software Inputs」という隠しアイテム(?)があります。
これを使うとfluxなどの外部アナライザー向けinputが確保できて便利です。

2022年4月現在(発売から1年半後)でもソフトウェア未完成

Photo by Caspar Camille Rubin on Unsplash

Symphony Desktopは2020年10月24日に発売された製品です。
発売当初から「ソフトウェアアップデートで今後機能追加していく」ということは周知されていました。
それから1年半経ちましたが、未だに完全体になっていません。

多分2020年はApogeeにとって不都合が多い年だったのが理由

とはいえApogeeの仕事が遅いというのも少し違って、不運が重なった結果ソフトウェアの完成が遅くなっているのが実情だと思います。

背景としてApogeeはAppleのパートナー企業としてかなり親密な関係にあります。
Mac製品ページの下の方とかはパートナーとしてApogeeのロゴと社名がありますし、Apogeeのソフトウェア対応はWindowsよりもMacが優先されてます。
それゆえApogee製品のMac上動作安定性はかなり高いです。
M1 Macのネイティブ対応もおそらく最速でした。

そういった事情があり、Apogee側からすると重要なパートナー企業のAppleがMacに独自プロセッサM1(Apple Silicon)を搭載したり、世界中で新型ウイルスが流行したりしたので予定通りに行かないことが多かったのは想像できます。

筆者総評 : 高品質&高機能だが、合う人が限られる

今のところあまりいいこと書いてませんが、筆者はなんやかんや気に入っています。
気に入っているポイントを挙げると

  • Mac, Logic上利用時の動作安定性(今までインターフェース由来で一度もLogicが落ちてない)
  • 音質やノイズの少なさ(スピーカーの性能も関わってくるので一概には言えませんが)
  • アナライザー用のinput確保をSymphony Desktop内でできる

ただ「ある程度条件が揃ってる人でないと買って後悔する」と思うので、それについて書きます。

買って後悔する人、しない人

買って後悔する人(多分RME製品とか買った方が幸せになれる人)

  • Windowsユーザー
  • MacユーザーだけどDAWにLogicを使っていない人
  • ミキサーの扱いに慣れていない人
  • 手探りで使い方を把握していくのが苦手な人、嫌いな人

買って後悔しない人(Symphony Desktopが向いてる人)

  • MacユーザーかつLogicユーザー
  • 特にDAWが落ちることが嫌いで動作安定性を重視する人
  • オーディオエンジニアなど、ミキサーの扱いに慣れている人
  • 取扱説明書を読まないタイプの人
  • 取扱説明書がなくても手探りで使い方を把握していける人

まとめ

今回の記事ではApogee Symphony Desktopについて半年以上使った筆者のレビューをまとめました。

ひとことでまとめるなら

不親切仕様だが、音質、ルーティング自由度、Logic安定性が抜群のホームスタジオインターフェース最高峰

といった感じです。

今回の記事は以上です。
お役に立てれば幸いです。

付録 : 記事関連製品まとめ

本体

筆者が使っている本体-スピーカー接続用ケーブル

筆者が使っているモニタースピーカー

Symphony Desktopにしてから使い勝手が良くなったアナライザー

美しさ、反応速度、拡張性どれをとっても最高です。値は張りますが、相応の価値があります。
類似品に同じFLUXから出ているStudio Session Analyzerというものがありますが、あれはDAWプラグイン経由でしか使えない半端者なので注意です。(筆者は数年前勘違いして購入してしまいました)

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