オーディオオカルトに懐疑的なPAがマランツ ライントランス「DLT-1」を試したのでレビュー

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はじめに

対象読者

  • ライントランス、特にDLT-1がどういうものなのか気になっている
  • ひとりのPA(音響エンジニア)としてDLT-1に対する筆者の感想を聞いてみたい

音響の先生がマランツのライントランス「DLT-1」を貸してくださり、3ヶ月ほど使ってみたので感想をまとめておきます。

「違いが分かるまで貸してやるから聴いてみろ(意訳)」的な言葉とともに授かりました。
出音の違いはすぐに分かったのですが、予想とは異なるなかなか興味深い性能でした。

この記事からわかること

  • ライントランスがオーディオ回路の中で果たす基本的な役割
  • marantz DLT-1による聴感上の変化、性能
  • アースケーブルを使ったノイズ対策の方法

ライントランスの果たす役割とは?

そもそも「ライントランスってなんのためにあるのか?」を説明します。
諸説ありますが、「オーディオ信号の劣化を利用し好ましくない周波数を取り除くことで、音質を向上させるもの」です。
物理的な接点が増え、回路が長くなれば歪みやロス、ノイズといった信号劣化のリスクは増えます。
しかしライントランスはそれを逆に利用し、意図的にオーディオ信号のロスされる成分を「削ってほしい部分」に狙い、結果として出音を良くするというものです。

かつてはレコーディングの現場では使っているミキサーは回路がアナログでした。
その回路にトランスが組み込まれていて、それが自動的に良くない周波数、特に高域の良くない成分を劣化によって消してくれていたそうです。
時代が進歩してミキサーがデジタルになり、回路からトランスが排除されました。
その結果今までトランスが消してくれていた「良くない周波数」が収録された音源に入ってきてしまうことになりました。
ライントランスはトランスをオーディオ回路に後付けすることで、良くない信号成分を消去し音質を向上させるアイテムなのです。

使用環境

音源データ元 Macbook Pro 2017 WAV 16bit 44.1kHz
↓USBケーブル接続
オーディオI/O Focusrite scarlett 2i2
↓フォン-RCAケーブル x 2 接続
ライントランス marantz DLT-1
↓RCA-RCAケーブル x 2 接続
モニタースピーカー fostex PM0.3 ペア

普段使っているモニター環境に挟む形で接続して使用しました。
アースはDLT-1の端子を利用して取った状態でのレビューです。
(実際のアースをとった状態の写真はデメリットを述べたセクションに載せています。)
アースを取らない状態では私の環境ではノイズが混じってまともな音が出ませんでした。

実際に使ってみた所感

ここからが本題です。
いくつか感じた変化についてまとめました。

固定EQのようなものだと考えていたが違った

実際に音を聴いてみるまでは、この手のものは「設定固定のEQみたいなもの」だと考えていました。
EQは周波数に対する音色の変化を自分で決められますが、そういった設定は固定されてできないものという意味です。

DLT-1を通した状態で何曲か聴いてみたところ、固定EQのようなものではないと感じました。
曲によってDLT-1を通す前後の変化が、それぞれ異なっているように感じたからです。

不思議なことですが、まるで「曲によっていい感じに聞こえるように自動設定されたダイナミックEQ」のような感触です。

高域の一部は確かに僅かに薄くなる

ライントランスの果たす役割については前述しました。
曲によって変化に違いはあるものの、全体で共通したことのひとつとして
「確かに高域が薄くなっているな」
と感じました。

しかし軽減された高域成分が「良くない周波数」であるようには私には感じませんでした。
おそらく私の先生の年代では「あると良くない周波数」であったものが、機材の変化によって私の世代では「あっても普通の周波数」として立ち位置を変化させていたのだと考えました。
つまり今の若い世代くらいだと「かつてトランスによって軽減されていた周波数」は「耳なじみのあるもの」になっている可能性があるということです。

高域の一部が消えるので、やや出音は「眠く」なります。
他の表現をするなら、うっすら優しくなるとか、ほんのり遠くに感じるとか、あたたかみが少し増すとかいった感じです。
モニター環境としてはデメリットですが、聴いていて疲れない感じがするのは良いと思います。

一部の曲ではベースとキックが感動的に良くなる

何曲か聴いたうち、感動するくらい良い変化をした曲がありました。
そのうちのひとつが米津玄師とDAOKOの「打上花火」です。

この曲のAメロでキックの音が鳴り始めるのですが、ハッとするほど良い音色になりました。
聴き慣れている方はDLT-1を購入された際は、聴き比べに使ってみてください。

他の曲でもキックやベースの音が良く聴こえるようになります。
「音量が上がったように感じられる」というより、「音の存在がリアルになる」ことで良く聴こえる感じです。

デメリットは接点が多くなること、アース線が必要になること

ライントランスは「回路間に挟む」形で使うものなので、必然的に接点は増えます。
そのため接点が増えることで音質の劣化を懸念する人や、オーディオケーブルの本数を増やしたくない人にはおすすめしにくいです。

また、このDLT-1はアースを取らないとノイズが混じって使えない可能性があります。
私はDLT-1本体のアース端子を利用し、LRそれぞれのInput/Outputの計4箇所をアースしたらノイズが消滅しました。

アースを接続する場合はアース用のケーブルが本来であれば必要です。

しかし私は持っていなかったのと、作るのが面倒だったのでアルミホイルを細工して代用しました。邪道です。

アルミホイルアース線代用の様子。見た目から邪道だがノイズはなくなる。

試聴だけこれで乗り切ればいいかなと考えていましたが、3ヶ月くらい経った今もこのまま使っています。
冷蔵庫や電子レンジのアースと違って「ノイズの原因になる微細な電流を逃してやる」ことができればいいので、これで充分なのだと実際に試してみて感じました。
これを真似する場合はRCA端子のアース部だけをアルミホイルに接触させるように注意する必要があります。
中央の信号部分もアルミに触れてしまうと信号が逃げてしまって、音のボリュームが明らかに減るのですぐわかります。

追記 : アルミホイルを使ったアース線の作成&接続方法

「上の写真のアルミホイルを使ったアース線の作成方法と接続方法を教えて欲しい」というお問い合わせがあったので、詳細解説します。
難しいことは何も無いので全部で5分くらいで終わります。

邪道アース線作成方法

用意するのはキッチンで使うようなアルミホイルとハサミです。

アルミホイルは特にこだわりはありませんが、一応「表面に魚が焦げ付かないための皮膜など、余計な加工の無いもの」の方が導電性から見ておすすめできます。

アルミホイルをロールから少し切り離します。使うのはほんの少しです。

アルミロールから切り離したホイル
アルミロールから切り離したホイル

このままだと長すぎるのでハサミで切ってアース線として使うのに都合のいい長さにします。

アース線として使うのに程よい長さにカット
アース線として使うのに程よい長さにカット

細長くなるよう、何回か半分に折ったら完成です。
参考までに、筆者は3回折ったので厚みは8倍になってます。

折り返して細長くしたアルミホイル
折り返して細長くしたアルミホイル

筆者は幅4~5mmにして使っていました。

邪道アース線接続方法

作ったアース線でRCA端子のグランド側とマランツのアース端子を繋ぎます。

RCA端子はオスメス共に中央がホットで外側がグランドになっています。
アルミホイルアース線の薄さを活かして、RCAオス側端子のグランド内側とRCAメス側端子のグランド外側に挟むようにします。

RCAのオスグランド部分にアース線を突っ込んだ様子
RCAのオスグランド部分にアース線を突っ込んだ様子

言葉にするとややこしいですが、上の写真のように「アース線の先をRCAオス側に少し突っ込んでおき、そのままアース線を挟み込むようにしてRCAメス側に接続すればOKです。

実際にアース線をRCAオスメスのグランドで挟んだ様子
実際にアース線をRCAオスメスのグランドで挟んだ様子(※DLT-1は返却してしまったので別機材で代用)

アース線のもう一端はDLT-1のアース端子に挟みましょう。
これを4箇所(Input L,R、OutputL,R)で同様に行い、先述したデメリット説明の項の写真のようになれば完了です。

注意しなければいけないのは、接続した後に「明らかに音量が減ってしまっている時」です。
この場合はアース線がグランドだけでなく、ホット側にも接触してしまっていることが原因です。
アース線の突っ込む部分を控えめにし、グランド部分にのみ触れるよう接続を調整しましょう。

まとめ : 確かに音は変わるので一聴の価値あり

オーディオ製品って「違いが分かる人には分かる」みたいな顔をして、実際は気のせいレベルのものが混じっている世界でもあります。
このライントランスを先生から借りた時も、正直少し警戒していました。

しかしDLT-1は実際に聴いてみると確かに違いがあり、その変化は一長一短とはいえ、使いどころがあると実感しました。

まとめると

高域は少し減る(昔の音源に聴き慣れた人にとって、現代の音源の「良くない周波数」がカットされる)
(上の影響に付随して)よく言えば聴き疲れしにくい出音になる、悪く言えば少し眠い音になる
ベースとキック(バスドラムの音)がリアルな質感を帯び、聴きやすくなる

という感じです。

特に「最近の音楽はなんか嫌な音を感じるんだよなー」という人には試す価値があると思います。

それでは今回の記事は以上です!
お役に立てれば幸いです。

後日談 : 今のタイミングなら「RNDI-S」がおすすめ

ライントランスはマランツ以外にもオーディオメーカー各社から生産されています。

筆者もいくつか触れたのですが、もし今「DLT-1」のようなステレオのライントランスを買うなら「RNDI-S」がおすすめできます。

レコーディング機材としてグラミー受賞アーティストも使っている製品です。
なのに6万円前後で買えます。(2022年7月時点)

筆者はこれのモノラル版「RNDI」を購入し使っています。
「DLT-1」とはキャラクターが異なりますが、「良い音としてさりげなく味付けしてくれる」という意味では良い勝負です。
筆者の感覚ではDLT-1は低域に効いて存在感を上げるのに対し、RNDIは中域に効いて存在感を上げる印象です。

しかもDLT-1と異なり、RNDI-Sは現在も販売しており入手も容易です。

付録 : 登場製品購入先情報

marantz DLT-1

購入先リンク : Amazon

サンワサプライ アースケーブル

RUPERT NEVE DESIGNS / RNDI-S

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