はじめに
対象読者
- DTMをやっているけどバックアップをとっていない人
- バックアップ用のディスク選びに悩んでいる人
- バックアップを取るメリット、バックアップを取らないデメリットを知らない人
この記事からわかること
- バックアップを取らない恐ろしさ
- バックアップをとっておくことで回避できるリスク
- バックアップ用にはSSDではなくHDDが適している理由
- 筆者が実際に使っているバックアップディスク&方法
奈沼 蓮
DTMer、サウンドエンジニア(サウンドデザイン、ミックス、マスタリング、ライブPA)
2020年に新型ウイルスでライブハウスが軒並み休業になった時に勉強して「基本情報技術者」の資格を取った。でも結局転職はしていない。
本当にあった怖い話
これは私の先輩に実際に起きた出来事です。
彼はヒップホップのビートメイカーで、DAWで300 ~ 400曲ものビートを作成し、楽曲提供やミックスの依頼などの仕事もこなすクリエイターでした。
ある日、彼がいつものようにパソコンを立ち上げようとしました。
しかしいつものように起動しません。
エラーメッセージが表示され、どうやら「ハードディスクが故障した」ことがわかりました。
彼はまずい状況になったと悟りました。
ハードディスク内のデータのバックアップをとっていなかったのです。
今まで作った曲のプロジェクトファイルも、ミックス依頼を受けた曲のデータも壊れてしまいました。
その後、数々の問題を彼がどう解決したのかは知りませんが、「やっとまた曲が作れるようになった」と先輩が話したのは2週間後のことでした。
スタジオ : (きゃー)
もう先輩は立ち直って笑い話になりしばらく経ちますが、データが吹っ飛んだ数週間は結構落ち込んでました。この話になると「バックアップ取っとかなかったのは愚かだったなー」と言ってます。
ディスクやデータの破損は突然やってきてもおかしくない
ハードディスクの故障のタイプは「物理障害」と「論理障害」がある
ハードディスクが故障によってダメになってしまうタイプは2種類あります。
それらは「物理障害」と「論理障害」に分けられます。
物理障害
物理障害は文字通り「ハードディスクが物理的な損傷を受けたために正常に機能しなくなってしまった」ケースです。
これはSSDよりHDDに起こりやすく、構造が精密で衝撃や埃に弱いことに起因します。
持ち運ぶことの多いノートパソコンのハードディスクがSSDのことがほとんどなのは物理障害のリスクを減らすためです。
論理障害
論理障害は「ハードディスク上の情報を読み込むためのデータが破損し、正常に読み込めなくなった」ケースです。
ハードディスク上の記録は「0と1の連なり」に過ぎないので、「0と1の組み合わせを解読するデータ」が壊れてしまうと意味の無いものになってしまいます。
ややわかりにくいので例えを用いると、この状態は「今まで英語の本が読めていた人が記憶喪失によって英語がわからなくなると、英語の本はただのアルファベットの羅列された紙のまとまりになってしまうこと」に近いです。
論理障害はHDDでもSSDでも同様に起こります。
主な原因は強制シャットダウンや不正なデバイスの取り外しによって重要なデータが破損してしまうことや、ファイル名の不適切な変更によって読み取りシステムに支障が生じることなどです。
物理障害と異なり、丁寧に扱っていても論理障害による故障のリスクは存在します。
ハードディスクは「消耗品」であり寿命がある
HDDにしてもSSDにしても精密機械であることから、繊細であまり寿命は長くありません。
使用頻度などにもよりますが、寿命の目安はハードに使うなら3年程度。クリーンな環境でほぼ動かさない状態なら7年程度です。
重要なデータが入っているハードディスクが古くなってきた場合は、新しいハードディスクを購入して中身のデータをコピーしておくと安心です。
ハードディスクは丁寧に扱っていても壊れてしまう「消耗品」である!
バックアップ用にはHDDがおすすめな理由
HDDはSSDより書き換えに強く長寿命
ハードディスクはHDDとSSDの2種類がありますが、「バックアップ用のハードディスク」に向いているのはHDDです。
特徴 | HDD | SSD |
---|---|---|
データの書き込み/読み込み速度 | 遅い | 速い |
衝撃に対する強さ | 弱い | 比較的強い |
データの書き込み/消去による劣化 | 軽微 | 比較的重い |
寿命 | 長い | 短い |
値段(同記憶容量) | 安い | 高い |
バックアップ用のハードディスクは「万が一の時のための予備」という性質から、
- あまり持ち出さない(デスクの上の定位置にいる)→衝撃に対する強さはあまり求められない
- 寿命は長い方が良い
- 普段は使わないので書き込み/読み込み速度が遅くてもあまり支障ない
- バックアップデータは膨大になるので、大きな記憶容量が必要→安価で大きな記憶容量の方が助かる
- バックアップデータは古いものは消されて上書きされるので書き込み/消去の劣化は少ない方が良い
これらの側面があります。
このことからわかるように、バックアップ用のハードディスクにはHDDが圧倒的に向いています。
HDDとSSDはそれぞれ長所/短所があり、バックアップ用ディスクに向いているのはHDD!
筆者が実際に使っているバックアップ方法(Macのみ)
ここからは筆者が実際に「いろいろ検討した結果、この方法でバックアップを取ろう!」と決め、実際に使っている方法を紹介します。
HDD選定
選定のポイントは6つ
- 容量は4TB以上(バックアップ元のメインマシンはストレージが2TB)
- ファンレス設計(ファンの音はDTM中にノイズになるため)
- 予算は1~1.5万円程度
- ケース不要の外付けタイプ
- 直近のAmazonレビューが概ね良好
- 保証期間が3ヶ月以上ある(初期不良のリスク回避のため)
これらのことより、BUFFALO「HD-AD4U3」に決めました。
使い始めて3ヶ月経過の後日談
バックアップディスクとして使い始めて3ヶ月ほど経ちましたが、問題なく正常動作しています。
Amazonのレビューによると半年超えたあたりで壊れ始めた人もいるそうなので一応注意はしていますが、多分そういう人は「HDDが衝撃に弱いことをあまり知らなかったタイプの人なのではないか」と思っています。
今後故障など起こったら記事に追記して報告します。
バックアップシステムソフトは「Time Machine」を利用
バックアップを取る方法はいろいろありますが、私はApple純正のバックアップ用アプリ「Time Machine」を利用しています。
- Apple純正アプリでM1環境下でも動作信頼性が高い
- Macユーザーは無料で使える
- ディスクの暗号化やパスワード適用などセキュリティ機能もある
- 自動でバックアップをとってくれる
- バックアップ方式が「増分バックアップ」なので自動バックアップ時の所要時間が短く済む
こんな感じで費用、機能、信頼性からして優秀だからです。
バックアップの方式は3種類あり、
- 全てのデータを保存する「フルバックアップ」
- 一度フルバックアップした後に変更されたデータのみを保存する「差分バックアップ」
- 前回のバックアップ以降に変更されたデータのみを保存する「増分バックアップ」
があります。
定期的なバックアップを目的とするなら、増分バックアップを利用するのが処理データ量が最も少なく、時間もかからないので適しています。
DTMするMacユーザーなら「HD-AD4U3」のようなファンレスのHDDで「Time Machine」利用でバックアップディスクを作成するのがおすすめ!
まとめ : 1万円前後のバックアップで努力の結晶も信用も守れる
今回の記事ではDTMer視点で「バックアップの大切さ」と「おすすめのバックアップ方法」を解説しました。
今回の内容をまとめると
- バックアップを取っておかないと作品や仕事のデータを突然失うかもしれない
- HDDもSSDも消耗品なのでいつかは壊れる
- バックアップディスクにはSSDよりHDDが適する
- 今なら1万円くらいでも4TBの外付けHDDが買える(執筆時点2021年11月)
- Macユーザーなら純正アプリ「Time Machine」で簡単にバックアップを作成できる
こんな感じでした!
この記事を読んでいる方には、ハードディスク障害のデータ消滅に怯えることなく音楽制作を楽しんでいくことを願っています。
ぜひこの記事の情報を活用してください!
今回の記事は以上です。
お役に立てれば幸いです。
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