知らないと苦労する耳コピの基本と楽にする応用テクニック

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対象読者・想定読者

  • 耳コピに挑戦しているがしんどくて諦めそうな人
  • 耳コピをもっと楽にできる方法を探している人

耳コピは慣れていないとなかなかしんどいです。
絶対音感や相対音感が無くても、音を確認するもの(ピアノとか)があれば時間はかかりますができます。

今となっては耳コピを楽にするための文明の利器がいくつもあります。
集中力や時間を節約するために一度使ってみてください。

記事作者紹介

奈沼 蓮

元は作編曲家だが、音響エンジニアリングが強いのでミキシングやマスタリング、ライブのPAもやっている。

耳コピは苦手だったが、工夫して改善したらそれなりにできるようになってきた。

最近ざる蕎麦のおいしさに少し感動した。

耳コピの基本的なやり方

この記事で紹介するのは応用的な手法ですが、その前に「基本的には耳コピはどうやるか」ということを確認します。
ある程度耳コピに慣れている人はこの項目は読み飛ばして問題ありません。

耳コピ前に用意するもの

  • 耳コピする曲
  • 音を確認する楽器(ギターやピアノなど)
  • 記録するもの(メモ用紙や五線譜などの紙、DAWのMIDIデータなど)

耳コピで把握していく順番

STEP
全体の構成(イントロ、Aメロ、Bメロ、サビなど)

まず楽曲の構成を把握します。
ここは音感が要らない部分で軽視されがちですが、実はかなり重要です。
というのは楽曲は「繰り返し」によって成り立っているため、「どこが繰り返されているか」を把握すると全体の作業がグッと楽になるからです。

STEP
各構成の小節数

ここでもまだ音感は要りません。
なぜ小節数を把握する必要があるのかというと、「リズムを捉えやすくなるから」です。
耳コピというと「音程(ピッチ)」を取ることの難しさに意識が行きがちですが、初心者の場合リズムを取るところからつまづきやすいです。
小節数を把握することで「穴埋め問題」のようにこの後の作業を進めることができます。
また小節がコードの変わり目となっていることも多いため、コードチェンジの目安にもなります。

厳密には小節数のカウントの前に「拍子」を把握する必要がありますが、ここでは割愛します。

STEP
楽曲のキーとスケール

音楽理論の初歩が必要ですが、楽曲のキーを把握します。ここから少し音感を使います。
キーの判定は厳密に行うと難しいですが、ジャズの一部など複雑な音楽ジャンルでない限りは「終わった感じのする音」がキーの音であることがほとんどです。
例えばキーが「C(ハ長調もしくはハ短調)」であれば、フレーズの終わりでCの音(ドの音)を鳴らすと「終わった感じ」が出ます。

曲中で転調している場合はキーが複数利用されている場合もあります。

キーがなんとなく予想できたら次はスケールを予想します。
ここはちゃんと説明するとかなり長くなるのでざっくりいきます。
基本的には「メジャースケール」か「マイナースケール(ナチュラルマイナー、ハーモニックマイナー、メロディックマイナー)」の大きく分けて2つ、細かく見ると4つになります。

こちらも判定方法は厳密にやると難しいです。
簡単な方法としては「明るい、元気、能天気な雰囲気はメジャースケール(長調)」であることが多く、「暗さ、真剣さや深刻さ、悲しみを持った雰囲気はマイナースケール(短調)」であることが多いです。

それぞれで「使う音の種類」が違うので、スケールを把握しておくと音を拾うときに候補をかなり絞ることができます。

ポップスなどによっては曲中でメジャーとマイナーを行ったり来たりしている場合もあります。
例えばBメロでマイナーになってサビでメジャーにして雰囲気に明確な差をつけたりしていることは多いです。

STEP
実際のフレーズ

やっと「耳コピ」っぽい部分になりました。
曲から聞こえてくる音と同じ音をピアノやギターなど音を確認するものを使って探っていきます。
見つかった音は忘れないように紙やデータとして記録しておきます。

ここではリズムとピッチを取るので音感が優れていれば優れているほど有利です。
しかし前述までの構成、小節数、キーとスケールが取れていればかなり楽をすることができます。

ここまでのポイント!

耳コピは記録するものと楽器を用意し、楽曲の大まかな流れから把握していくと効率が良い!

以上が基本的な耳コピのやり方です。
この先は耳コピを楽にするテクニックを紹介していきます。

無料DAWでこまめな再生をする

初心者向け解説「DAW」とは?

Digital Audio Workstationの略。
作曲やミキシングなど音楽制作の作業をパソコン上で行うためのソフトウェア。
大抵の場合「作曲ソフト」として解釈・認知されている。
代表的なDAWはCubase, Logic Pro, Protools, Studio One, FL studio, Ableton Live。

耳コピをスマホの音楽プレイヤーやYoutube動画からやっているとすれば、その時点でかなり無駄な時間が生じています。
なぜなら「細かく巻き戻す」「聴き取りたい部分だけを繰り返し聴く」ということがやりにくいからです。

DAW上であれば1小節単位で巻き戻しや繰り返し再生(ループ再生)ができます。
これだけでもかなり助かりますが、イコライザやアナライザなど「音を把握するための機能」が盛りだくさんです。

奈沼のつぶやき

「無料DAWで」としましたが、有料のDAWでももちろん問題ありません。
私は耳コピの際にLogic Proを使っています。
機能や使いやすさはかなりおすすめできますが、値段が2万円台後半でまあまあ高いです。
少なくとも「耳コピだけ」のために買うのはオーバースペックすぎるのであまりおすすめできません。

Macユーザーであれば「GarageBand」が無料で使えますし、Windowsユーザーでも「Studio One Prime」など無料体験版のDAWという選択肢があります。

詳しくは別の記事で解説します。

ここまでのポイント!

楽曲の再生はDAWを使うと効率アップ!耳コピ目的なら無料のでも十分!

聴くときはモニターヘッドホンを使う

耳コピする上で楽曲を「何で聴くか」はかなり重要です。
ピアノのみなどのシンプルな楽曲ならあまり関係ないですが、バンドの曲などになると音数が多く聴き分けるのが難しくなります。

イヤホン、ヘッドホン、スピーカーが選択肢として考えられますが、私は断然「ヘッドホン」をおすすめします。
特に「スタジオモニターヘッドホン」であることが理想です。

それぞれの選択肢の特徴を比較すると次の表の様になります。

評価対象ヘッドホンイヤホンスピーカー
ステレオ幅の広さ
低音の聴きやすさ◎(大きいものの場合)
部屋の構造の影響なしなしあり(反射や共振)

つまり、

  • ヘッドホンはスピーカーより各楽器を離れた状態で聴くことができる→分離して聴きやすい
  • ヘッドホンはイヤホンでは再生が難しい低音まで再生できる→バスドラムやベースが聴きやすい
  • ヘッドホンは部屋の音環境に左右されることがない→部屋に吸音材とか必要なくちゃんと聴ける

ということです。
耳コピするなら圧倒的にヘッドホンが有利です。

奈沼のつぶやき

ちなみに私は耳コピには「YAMAHA HPH-MT8」というモニターヘッドホンを使っています。

モニターヘッドホンの中でも楽曲の細かい部分を聴き取るために必要な「分解能」に力を入れた製品です。
本体がやや重いことや高域(音の高い部分)がシャキッとする部分は難点ですが、性能は良いです。
プロも使う性能でありながら値段が2万円台というのもおすすめできる点です。

ここまでのポイント!

楽曲は細かい部分まで聴きやすいようにヘッドホンを使う!

zplane「deCoda」で音のピッチやタイミングを可視化する

「deCoda」は耳コピツールの代表格とも言えるソフトです。
最大の特徴は「音のピッチやタイミングを可視化してくれる」ことです。

ピッチを可視化してくれるのは音感を持っていない場合かなり助かります。
またピッチがあまり重要でないドラムの耳コピなどでもタイミングを可視化してくれるため楽になります。

一方でアニソンのような「楽器の多い曲」や昔の曲でよくある「テンポがあまり安定しない曲」の解析は苦手です。
全て表示してくれますが、可視化した音の影が混ざり合って読み取りにくくなります。

「Spleeter」で曲を楽器毎の音に分離して聴きやすくする

「Spleeter」はミックスされた楽曲を大まかなパートに分離してくれます。
分離の例としては「ボーカル/ボーカル以外」、「ボーカル/ベース/ドラム/ピアノ/その他」です。

使ってみるとわかりますが、楽曲がミックスされる前の状態ほどには綺麗に分離はされません。
期待のし過ぎは禁物ですが、元の楽曲をそのまま聴くよりはずっと目的の対象が聴き取りやすくなることは間違いありません。
しかも利用は完全無料です。何曲分離させてもお金がかからない。

GitHubの公式ページによると、iZotope「RX8」やSpectralLayers「SpectralLayers 7」のようなプロも使う有料波形編集ソフトでもSpleeterが内部で動いています。

ちなみに「Spleeterで分離したオーディオデータをdeCodaで読み込ませる」という合わせ技もできます。
少し手間は増えますが、deCodaの難点である「曲の音数が多いと表示がごちゃついて読みにくい」という問題を解決できます。

【ピアノ限定】ByteDance「Piano Transcription」で解析

扱えるのはピアノソロ曲限定ですが、Piano TranscriptionというソフトはAIがピアノをほぼ完璧に耳コピしてくれます。
しかもSpleeter同様無料で使えます。

解析精度が凄まじく良いです。
上の記事で私も検証しましたが、ピアノ曲演奏最難関と言われる曲でもほぼ遜色なくコピーしてくれます。
しかもピッチやタイミングだけでなくペダルポイントまで解析してくれます。
なぜ日本では話題にならないのか不思議なレベルの優秀さです。

耳コピしてくれると言っても、正確には解析結果はMIDIデータです。
無料DAWに読み込ませてピアノロールを使って表示させるとか、musescoreのような無料楽譜ソフトを使って譜面にする必要があります。

まだ記事にはしていませんが、Piano TranscriptionもSpleeterと組み合わせて使ったことがあります。
「ピアノ弾き語り曲」をSpleeterで「ボーカル/その他(ピアノ)」に2分割し、「その他(ピアノ)部分」をPiano Transcriptionで解析させるという具合です。
結果として「耳コピのヒントになる程度には解析してくれた」と言った感じでした。
タイミングとピッチはかなり良いのですが、持続音が連打に変わってしまったりしたので完璧とはいかなかったです。

音楽理論を基に推測する(キーやコードの情報を手がかりにする)

人によっては手が伸びにくい分野ですが、基礎的な音楽理論を把握するだけでも耳コピは非常に楽になります。

奈沼のつぶやき

音数の多い音楽の場合、全ての音を「聴き取って」判断することは至難の業だと私は考えています。長年の修行か卓越した聴力が無いと無理です。
しかしほとんどの音楽は理論的に説明可能なので、英語のリスニング同様に「聴き取れない部分は前後の流れから論理的に推測する」ことができます。

音楽理論のうち「スケールの概念」と「コードの概念」が無いと、全ての楽器が出している音が「何の法則も無く無作為に選ばれたもの」に見えます。
実際は全く異なり、「スケールやコードを基にメロディーやハーモニーが成立する音を選んでいる」のです。

  • 曲の音の大半(ほぼ9割以上)はキーを中心としたスケール内の音でできている
  • ハーモニーを作ってるギターなどのコード楽器の音はほぼダイアトニックコードでできている

これらのことがわかっていると「耳コピの過程で拾う音」の候補をグッと減らすことができます。
つまり無駄足を踏む数を減らすことができ、時間や集中力の節約になります。

どこで学べばいいか悩む人は、とりあえず「SoundQuest」がおすすめです。
無料の音楽理論解説サイトです。
説明がやさしく、図解、具体例の楽曲、比較音源など感覚的に納得しやすい解説です。

まとめ

今回の記事では「耳コピを楽にするテクニック」について紹介しました。

まとめると

  • 音を聴く再生環境を最適化する(DAWによる再生、モニターヘッドホンの利用)
  • 耳コピ支援ソフトウェアを利用する(deCoda、spleeterなど)
  • 聴覚だけでなく音楽理論を基にして推測する(キー、コードなどの情報)
奈沼のつぶやき

紹介したものの多くはソフトウェアを使ったものですが、個人的に一番効果があると思っているのは最後に紹介した音楽理論の活用です。

今回の記事は以上です!
お役に立てれば幸いです。

紹介した製品など

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