はじめに
対象読者
- DTMerなどの音楽製作者
- 転職のための布石として何か資格の取得を考えているが、音楽制作にも役立つものを選びたい
- 音楽制作周りの知識・技術について体系的に勉強する方法を探している
この記事からわかること
- DTMなどの音楽制作に役立つ知識が体系的に身に付く資格
- 各試験の時期、難易度など概要
- 各資格の知識が役立つ場面
奈沼 蓮
DTMer、PAエンジニア
今回紹介する中では基本情報技術者の保持者。
ほか2つも音楽と距離を置きたくなったりしたタイミングで勉強しようと考えている(多分しばらくやらない)。
前置き : プロになる上で「資格を持っていること」自体は役に立たない
こういう記事を書くと、「プロのアーティストになるために勉強した方がいいのか」と誤解されそうです。
前持って断っておくと、「これから紹介する資格を持っていること自体」は音楽のプロになる上でまず役に立ちません。
あくまで私の周りの人たちを見る限りですが、何か特定の資格を持っていることが音楽のプロになる役に立ったとかいう話は無いです。
ではこれから紹介する資格は勉強する意味が無いのか、というとそれは違います。
DTMを中心とした現代の音楽はさまざまな科学技術から支えられています。
特に情報技術、電機工学は重要度が高いです。
また制作した音楽の権利を守る法律も整備されています。
音楽は著作権をはじめとした知的財産権に守られ、私たちは他者の知的財産権を守らなければいけません。
DTMは何かと判断に迷うことや問題が起きやすいですが、関連する知識があると適切な対処ができます。
そんな役立つ知識を体系的に整理された情報で基礎から理解して学びたい、という場合に「資格の取得を目指して勉強をする」というのは目指す場所が明確になるのでおすすめです。
なので最悪合格しなくても良いのですが、合格できたりすると嬉しさや達成感があるので「人生のコンテンツ」として挑戦して欲しいです。
大事なのは「資格を持っていること自体」ではなく、「その資格の知識をより良い音楽制作活動に役立てる」こと。
音楽制作に役立つ資格3選
基本情報技術者(FE)
DTMの根本を支えているパソコンについて理解を深めることができます。
もとはプロのITエンジニアに向けた資格で、内容は本格的です。
勉強しておくと得する場面
- DTM用のパソコンや周辺機器を購入する際に適切な判断ができるようになる
- パソコンのエラーが表示された時、エラー内容を理解する知識がつく
- 情報セキュリティーの知識がつき、怪しいソフトウェアやプラグインに引っ掛からなくなる
音楽制作以外でいえば、就職や転職でも有利に働きます。
現代では基本的なパソコンスキルを必須要件として求められることが多いので、履歴書に書いておけばその条件を満たす証明になります。
試験情報
試験日程 : 年2回(4月頃の春期、10月頃の秋期) ※2023年4月からは通年受験可
試験方式 : CBT(各都道府県試験会場のパソコン操作で回答)
難易度&参考勉強時間 : やや難 200時間
筆者が実際に使って合格したおすすめの教科書&問題集
教科書には上記のキタミ式を使っていました。
図解が多く、読んでいて眠くなりません。
各章の終わりにスピードチェックとして小問5問用意されています。
「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、覚えた知識の理解度をすぐに試せてよかったです。
過去問題集は上記のパーフェクトラーニングを使っていました。
基本情報試験は過去問&解答だけなら公式サイトからダウンロードできますが、解説はネット配布されていません。
解説に相当する部分を教科書で調べたりすると時間がかかってしまうので、私は解説付き問題集を購入します。
この問題集は解説も丁寧で効率的に復習できます。
私はキタミ式を1周やって、勉強の仕上げとして過去問を3年分解きました。
それで受かるくらいの実力は付いたので、ここに載せた教材の質の良さは保証できます。
電験三種(電気主任技術者試験三種)
レコーディングやミキシング環境を調整するには電磁気学の知識と技術が必要です。
この資格は電気設備のエンジニアの登竜門とも言えるもので、基礎基本からプロ水準までカバーしています。
ちなみに近い資格で電気工事士がありますが、こちらは実技試験があります。
内容は「電工ペンチやハンダゴテなどの工具を用いて、制限時間内に正確に指定された電気配線を作成する」というようなものです。
実務を想定して行われるので制限時間も厳しく、仕事で普段から電気配線に触れている人でないと突破は困難です。
一方で電験三種は筆記試験のみなので、特別な訓練は要りません。
以上の理由から音楽製作者には電験三種の方がおすすめできます。
勉強しておくと得する場面
- レコーディングやライブでノイズが発生するなどの問題が起きた場合に対処できる。
- コンセントの改造が自分でできる。(資格保有してない場合は違法行為)
- エフェクターの改造や簡単なギターアンプの修理ができるようになる。交換部品の選定・調達ができる。
- 初めての音響機材でも、機材の技術数値を見て適切な設定の目安がつく。
音楽制作以外でも電験三種は強力なメリットがあります。
今回紹介する中で唯一「独占業務(資格保有者以外が行うと違法になってしまう業務)」を持っています。
このため建築業界やビル管理業界以外にも、電気設備を扱う会社であれば高い需要があります。
仕事内容が気にいるかは別として、転職を検討しているなら強くおすすめできる資格です。
試験情報
試験日程 : 上期(8月頃)と下期(3月頃)
試験方式 : 筆記(マークシート五肢択一)
難易度&参考勉強時間 : 難 500 ~ 1000時間
難易度も今回紹介する中でピカイチです。
合格に必要な勉強時間は受験前の素養によって差が出ます。
理系大学卒で物理系専攻とかだと基本知識があるので負担は低くなります。
筆者が実際に買った教科書&問題集
筆者が実際に本屋で見比べて買ったものです。
カラー印刷で図解が多く、低ストレスで読み進めていけます。
筆者は理系大卒ですが、高校時代に物理を受験で使わなかったので基礎からちゃんと固めるべくこれを使っています。
基礎固めに上記を1周したら各論(理論・法規・電力・機械)に移ろうと思います。
その時また本屋で選ぶので、選んだら記事更新します。
知的財産管理技能検定3級
カバーや歌ってみたなどをする場合はもちろん、イラストの借用でも気にかけなければいけない知的財産権。
うやむやでよくわかっていないまま使ってしまうと、権利侵害などの違法行為になってしまうかもしれません。
知的財産管理技能検定3級は「これから知的財産管理の仕事をする人向け」の資格の位置付けです。
完全な初心者状態から基礎を固めていき、知的財産関連の知識を把握することができます。
一気に2級以上を取りたいと考える人もいるかもしれませんが、2級以上は受験資格が必要です。
実務経験が無い場合、2級受験には3級合格が必要です。
1級受験は2級合格+実務経験1年が必要です。
勉強しておくと得する場面
- 楽曲やイラストを自分の制作物に借用する上で、「やっても良いこと」と「やってはいけないこと」の区別がつく
- 他者の楽曲を参考に作曲をする場合に、「どんなことをやってしまうとパクリになるのか」がわかる
- 製作者に許可を取る必要がある場合に、「どこに問い合わせれば許可が取れるのか」がわかる
音楽制作以外では就職・転職でJASRACやNexToneといった著作権管理団体、音楽出版社などに行きたい場合は有利になります。
他にはゲームメーカーの知財部門や特許事務所などで需要があります。
一説によると3級はあまり社会的評価が高くなく、2級から明確に有利になるそうです。
転職の布石とするなら2級取得まで目指すのが良さそうです。
試験情報
試験日程 : 年3回(3月、7月、11月)
試験方式 : 筆記試験(マークシートと記述併用)
難易度&参考勉強時間 : やや簡単 50時間程度
筆者が買う予定の教科書&問題集
関連法に注意しなければならないケースがマンガで解説されており、状況がわかりやすいです。
知的財産分野で大学教授をしており、知的財産系YouTuberの村井P(著作での名前は佐倉 豪)さんが執筆しています。
資格会社ではなく、知的財産のプロが作っているので内容も信頼できそうです。
教科書で一通り勉強したら仕上げに上記の過去問集で仕上げる予定です。
こちらも知的財産教育の専門機関が作っており、解説の丁寧さを売りにしています。
この検定も過去問題は3回分公式サイトから無料入手できますが、やはり解説付きの方が勉強効率は上がると思います。
まとめ
今回の記事では「音楽制作にも役立つ国家資格3選」を解説しました!
ポイントをまとめると
音楽業界で資格自体は評価されにくい。知識が重要。
DTMerなら基本情報技術者、電験三種、知財検定3級がおすすめ。転職の味方にもなる。
今回の記事は以上です!
お役に立てれば幸いです。
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