対象読者
- 歌、楽器、語り(ナレーション)をレコーディングしたいが上手なやり方がわからない
- 基本的なレコーディングの手法を知りたい
- レコーディング方法に関して信頼できる情報ソースが見つからない
この記事からわかること
- ボーカルや語り(ナレーション)、主要な楽器の技術的に正統なレコーディング方法
いきなり結論 : レコーディングの方法がわからないなら「Basic Recording Techniques」を観よ
読者の方々の時間をいたずらに取るのは申し訳ないので、もう結論を書いてしまいました。
表題の動画へのリンクも貼っておきます。
Audio-Technica USA 「Basic Recording Techniques from A-T」
ここからは読まなくても特に支障ありませんが、筆者がこれらの動画をオススメする理由などを書きます。
「Basic Recording Techniques」が優れている点
主要なレコーディング対象が揃っている
解説しているレコーディング対象が充実しています。
- ボーカル(ソロ、グループ)
- ボイスオーバー(ナレーション)
- エレキギター
- エレキベース
- アップライトベース
- マンドリン
- ピアノ
- オルガン
- ストリングス類(バイオリンなど)
- サックス類
- 木管楽器
- 金管楽器
- 少人数アンサンブル
- パーカッション(小物系、ラテン系)
他にもありますがざっと上げるとこんな感じです。動画総数計20本。
個人やバンドでのレコーディングであればほぼカバーできるラインナップです。
ちなみにドラムもあり、同チャンネルの別の再生リスト「Drum Mic Basics from A-T」で解説されています。
マイクメーカー公式の解説である
Basic Recording Techniquesは日本のマイクメーカー「株式会社オーディオテクニカ」のアメリカ部門「Audio-Technica USA」が作成したレコーディングの基本的な方法を解説したYoutube動画リストです。
動画内で利用されているマイクはオーディオテクニカ製品のみです。ここはしょうがない。
しかし反射を抑える工夫、指向性のあるマイクの近接効果の利用法、マイキングによって録り音にどんな変化をつけることができるか、といった普遍的な内容や応用できる内容も紹介・解説されています。
マイクで収音対象(レコーディングするもの)をどう記録するかの物理的な設定。
主にマイクと対象の距離、角度の設定のこと。
距離や角度が違うだけで音の表情やノイズ・反射の量は大きく変わることがあるため、レコーディングでは重要な要素。
マイキングはレコーディングエンジニアによって様々な考え方があり、クリエイティブな余地のある部分です。
とはいえ「マイクメーカーが想定する基本的な使い方」は情報としてかなり高い信頼性があります。
そもそもマイクメーカー側は「想定される使い方を基にしてマイクを設計している」ので、むしろマイクメーカー推奨の使い方以外でいい音を出す方が難しいです。
基本的な使い方を基礎として応用を探る際にも、効率的・効果的に工夫できます。
コンデンサマイクやリボンマイクなどの高価で繊細なマイクを壊してしまう事故の予防にもなります。
映像なので直感的に理解できる
レコーディングは教本とかで勉強すると、実際の状況と細かいところが違ったりしてしまいやすいです。
動画で観せてもらえることで「マイクと録音対象の距離感」や「実際に録音した音の状態」が具体的に掴めます。
解説動画は1本あたり2 ~ 5分
動画はどれも短尺です。
簡単に何度も確認できますし、集中力が切れることもありません。
その分内容が薄いかというとそういうことは感じません。
的確にポイントがまとめられている印象です。
難点は英語解説であること
アメリカの部門が作成してるだけあり、音声・字幕ともに英語のみです。
実際のセッティングと録音された音は確認できるのでそこまで支障は大きくないですが、細かい理解がしたいなら字幕を表示させてDeepLとか使いつつ少しずつ進めるしかないです。
日本のオーディオテクニカのYoutubeチャンネルに日本語字幕バージョンを載せて欲しいです。
筆者も仕事の予習で使っています
筆者はライブハウスでPAエンジニアをやっています。
よくある出演者の担当パート・楽器はボーカルやギター、ベース、ドラムなどですが、たまにフルートやサックスの奏者の出演者もいらっしゃいます。
(余談ですが、こないだはエレクトリックアイリッシュブズーキの奏者の方がいらっしゃいました。)
今までマイクで収音したことがない楽器の出演者が来ることがわかっている場合は「Basic Recording Techniques」の動画を予習に使います。
おかげさまでかなり助けられました。
まとめ : レコーディングの基本は「Basic Recording Techniques」で把握できる
今回の記事ではレコーディングの基本を動画で理解できるYoutube再生リスト「Basic Recording Techniques」を紹介しました。
この動画の良いところ・難点をまとめると
- 無料
- 主要な楽器が揃っている
- マイクメーカー公式で技術的に信頼できる
- 動画なので録音状態やマイキングなど、細かい設定まで把握できる
- 英語解説であること
本当にわかりやすくて役立つ資料です。
ぜひレコーディングのやり方を探している方は参考にしてみてください。
今回の記事は以上です!
お役に立てれば幸いです。
付録 : 更なるレコーディングの高みを目指す方々へ
今回紹介したのはマイクメーカー推奨の基本的なレコーディング方法でした。
しかし「本物のレコーディングエンジニアのクリエイティブなレコーディング手法を知りたい!」という人向けに資料を紹介します。
Recording Secrets for the Small Studio
宅録ガチ勢向けの一冊です。
アメリカの音響系雑誌Sounds on Soundsが企画し、グラミー技術賞を受賞したレコーディングエンジニアが何人も協力して「商業クオリティーのレコーディングを小さいスタジオ(自宅での宅録含む)で実現する方法」をまとめたものです。
私はこれのミキシング版の「Mixing Secrets」を読んでいますが、データに基づいた検証によって地に足がついた納得できる内容になっています。(音楽系のノウハウは特殊性故にあまり説明にしっくりこないことがあったりしますが、このシリーズはそういうことがありません。)
洋書なので英語がある程度読める人向けです。
私はまだ読んでいませんが、Mixing Secretsを読み終わった後に読みます。
私を追い越すなら今のうちです←
AL SCHMITT ON VOCAL AND INSTRUMENTAL RECORDING TECHNIQUES
機材のある方(資本力のある方?)、もしくは応用力のある方向けの一冊です。
グラミー賞を20回以上受賞したレコーディング界のレジェンド、Al Schmitt氏の書いた本です。(著者本人は2021年4月26日に亡くなられました)
こちらは日本語訳されているので英語のストレスはありません。
あまり評価は高くないですが、コメント欄を観る限り「情報が役に立てにくい」ことが原因と思われます。
一流のエンジニアが書いた方法論なので、使う機材も一流です。会社が経費で買うレベルの高価格帯。
そんな感じなのでもはや高級機材のカタログに見えてしまうというコメントさえありました。
これに関しては応用力次第かなと私は思います。
Mixing SecretsにAl Schmitt氏のエピソードがあり、それによると彼は「無料プラグインソフトだけで一流のミキシングをすることができると証明した」そうです。
世の中には有料プラグインも高級ハードウェアもたくさんありますが、工夫次第で代替する余地があるということだと思います。
要は「どの機材を使うか」ではなく「なぜその機材を使うか」を意識して参考にすれば価値のある本です。
もちろん潤沢な資金力がある方は実機を購入してそのまま実践するのもありです。(うらやましい)
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